肥満症治療と漢方薬
肥満とは体内に脂肪が過剰に蓄積した状態をいいます。現代医学では通常、身長より割り出される標準体重よりも20%の体重の超過が認められる場合を肥満と定義しています。したがって、体脂肪率の低い、筋骨隆々のアスリートであっても、標準体重より20%以上体重があれば、肥満と定義されます。逆に体脂肪率の著しく高い女性であっても標準体重よりも20%以下の超過であれば、肥満とは定義されません。
これは現代医学の落とし穴の一つです。
若いのに階段を昇り降りしただけで息の上がる人は、体内に脂肪が過剰に蓄積していることが多いのですが、みなさんはどう思われますか? ところで、肥満には症候性肥満と単純性肥満があります。前者は甲状腺・副甲状腺の機能異常や薬剤性あるいは腫瘍によるものです。これらは現代医学の治療が得意とする分野です。後者は原因がはっきりとしていません。そして、肥満の約90%が単純性肥満であるといわれています。そして、
現在医学でも漢方でも 単純性肥満を治す薬剤はありません。
単純性肥満というのはエネルギーの出入りにおいて入る方が多い状態が続いた結果、生じます。ですから食事療法によって入るエネルギーを抑え、かつ運動療法によって出ていくエネルギーを増やすことが治療の基本となります。
漢方は肥満症に対して、有効なのでしょうか?
昔の書物を見る限りでは、はっきりしません。そもそも昔は食料が不足がちであったので、単純性肥満があまり問題にはなりませんでした。
ただ、わたしは単純性肥満の特効薬がない現状では、治療にあたって、食欲を抑えたり、空腹感を緩和したり、便秘を解消したりすることが大切だと考えます。そういうことは漢方の得意分野でもあります。
たとえば、食欲を抑える「防風通聖散」や「大柴胡湯」、空腹感を緩和する「八味地黄丸」や「潤腸湯」、便秘の解消には「大黄甘草湯」があげられます。精神的ストレスから過食が起こっているのであれば「加味逍遥散」も効果があります。
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