漢方医学の基本思想 陰陽論
陰陽論は古代中国の中心思想で、後にくわしく述べる『易経』が起源といわれており、紀元前一千年ころの書物には、すでに多くの記載があります。
陰陽論は古代中国の宇宙観と密接に結びついて発達してきた哲学で、陰陽という対立する二つの基本属性で万物(世の中のすべての事象)を把握するという考え方です。「人間、万事塞翁(さいおう)が馬」の故事で有名な中国の古典『淮南子(えなんじ)』(天文訓)には
天地の未(いま)だ形あらざるとき、憑々(ひょうひょう)翼々(よくよく)、洞々矚々(どうどうしょくしょく)たり。故に太(たい)始(し)と日う。太始、虚かく、宇宙を生じ、宇宙、気を生ず。
とあります。これは
原初の宇宙は天地が未分化の状態にあり、混沌たるものが漂い、とらえどころがない状態であった。これを太始と呼ぶ、太始は漠然とひろがり、やがて宇宙を生じ、宇宙は気を生じた。
と、いうことです。
つまり宇宙のはじまる前というのは、万物を構成する根源的エネルギーしか存在していませんでした。ということです。また、太始は一般的には太極と呼ばれています。その後、陽気が上昇し、陰気が下降して天地が作られ、人間を含む万物はこの天地の交感によって生み出されたとされています。「太極」とは、大雑把にいうと、万物の根源であり、宇宙のもとのもとであるということになります。
この考えを元に万物を陰と陽の二元論で捉える陰陽論が誕生したのです。万物はすべて陰と陽にわかれ、互いに独立し、かつ互いに連携し、さらに常に動いているにもかかわらず、陰と陽の調和は保たれている。
それが陰陽論の基本思想です。
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