漢方医学の基本思想 気血水論
「気血水論」のうち、「気」についてもう少し詳しく説明します。先にも書きましたが「気」という考え方は、インド医学の「トリ・ドーシャ」とよばれる、人間の目には見えないはたらきが生命の維持に重要な作用をあたえるというものから来ています。わたしたちが普段つかっている「元気」「やる気」「根気」あるいは「病気」という言葉も、すべてこの「気」という思想から出来た言葉です。 「気」にはこの世に誕生したときに両親から受け継いだ「先天の気」とその後に地球上から摂取し続ける「後天の気」とがあります。ちなみに「先天の気」は腎に貯蔵されており、その量は先天的に決まっているとされていて、生涯を通じて、減ることはあっても、決して増えることはないとされております。また、「後天の気」は呼吸により肺から吸収される「天の気」と飲食物から摂取される「地の気」に分けられます。 第1章でも書きましたが、「後天の気」を増加させることを「養気」といいます。健康になる、あるいは健康を維持するためには「養気」が不可欠です。 では、具体的にどうすれば「養気」出来るのでしょうか?
その答えはズバリ、次の2点です。
「気」を消耗しない。
「気」を盛んにする。
まず前者についてですが、一喜一憂をしないことです。車の運転でも頻繁にアクセルやブレーキを踏んでは燃費はよくなりません。それと同じです。むやみやたらと喜んだり、憂いたりして生活すると「気」は消耗します。特に不要な心配や取り越し苦労を「百害あって一利なし」と心して暮らしましょう。次に後者ですが、喜ぶことです。ダジャレのようですが、「喜」は「気」に通じます。ここで、あなたはこの二つに矛盾があると感じたはずです。そうです。一方では「むやみに喜ぶな」と言って、他方では「喜びなさい」と言ってますね。実はこれは「適切に喜びなさい」ということなんです。
つまり、常にほどほどに喜んだ状態でいなさい。
ということです。このほどほどにっていう考え方は仏教の「中庸」の思想から出てきたもので、一言でいうと 何事もバランス(調和)が大切です。 ということです。漢方医学の思想の総ての行き着くところはバランス(調和)のとれた状態だともいえます。
第1章でも述べましたが、漢方は「人は自然の摂理にのっとっていれば、健康に暮らせる」という考えのもとに展開されております。そして 自然の摂理=バランス(調和)を保つ と、考えています。ですから、これまで述べた、陰陽論・五行説・臓腑論、気血水論のすべては調和を保つための理論だと言えると思います。
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