便秘などで便がかた過ぎたり、あるいは逆に下痢などで便がやわらか過ぎたりすると、肛門に過剰な圧力がかかるために肛門付近が切れたり裂けたりします。こうなると、排便時に激しい痛みが走り、排便後も鈍い痛みが続きます(図2-2)。
これを急性裂肛(単純性裂肛)といいます。この段階では皮膚の再生能力が残っているため、肛門周囲を清潔にし、軟膏の塗布を行えば、たいてい治ります。
しかし医者に行かずに放置すると、痛みのために排便を我慢して便秘になり、さらに症状を悪化させるという悪循環に陥り、急性裂肛を何度も何度も繰り返すことになります。こうなると、急性裂肛は亜急性になり、ついには傷が固定化してしまい、慢性裂肛になります。慢性裂肛は急性裂肛よりも治癒するまでに日数を要します。さらに放置すると、イボやポリープを形成します。さらに、排便のたびに肛門に痛みが生じるために内肛門括約筋がけいれんするようになり、やがて肛門(こうもん)狭窄(きょうさく)をともなう慢性(まんせい)潰瘍性裂肛(かいようせいれっこう)へと進行するのです。慢性潰瘍性裂肛は手術が必要です。また、裂肛を放置すると先の?痔核の中で述べた肛門のクッション部分に負荷をかけ、痔核を合併しやすくなるともいわれています。
Comments