漢方医学の基本思想 「易」について
先にも述べたように、中国には伝説の三皇がいます。『神農本草経』に出てくる神農、『黄帝内経』の黄帝と伏羲(ふっき)の三人です。(黄帝ではない、違う人物を入れている説もあります)
陰陽五行論および、この思想を基礎にしている漢方医学を語るうえで伏羲は避けて通れません。彼も神話的人物ですが、『易(えき)経(きょう)』は彼が記したとされているからです。
『易経』と聞くと、みなさんは
「なんだ、占いか」
と思われるかもしれません。
それは誤解です。
『易経』は四書五経の筆頭にあげられる、儒教の経典であり、中国では「君子のための書物」とされています。
『易』は
「宇宙万物は、すべて陰陽より成り立ち、無窮(むきゅう)に変化する」
という原理をもとに展開する学問です。
つまり、陰陽のバランスが変化することで一切を説くということです。逆にいうと、宇宙も人(人生・健康)も、すべては陰と陽で説明および予測可能である。すなわち、人も国家も宇宙の法則に従えば栄え、逆らえば滅びるということです。また
「『易』は広大にして無辺、悉(ことごと)く備わる」
と言われており、『易』は東洋において、哲学、科学全般の基礎、根本原理とされてきました。
『易』は自然の成り立ちを解く自然科学であり、人の生き方を考える哲学でもあります。そこから暦・方術(ほうじゅつ)(医学)・十二支・風水・占いなどが派生しました。
『易』は「身土不二」を原則としています。
「身土不二」とは
「人は自然の一部であり、環境の産物である」
ということです。自然環境の産物である人間はそれに適応するとき、生を全うし、反対にそれに逆らう時に滅びるのです。ここでいう適応とは環境に自らの陰陽の調和をはかるということを意味します。
そして
「万病の原因は、例外なく陰または陽の過剰であり、ゆえに万病の治療は過剰を取り除くか、中和することであり、万病の診断は局所にとらわれることなく、根本原因が陰または陽のいずれの過剰であるのかを決定することである」
と、されています。
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